易とシンクロニシティ
ユングは、『易経』をドイツ語に翻訳した中国学者リヒャルト・ヴィルヘルムとも交友がありました。
ユングがヴィルヘルムと最初に出会ったのは、1920年ごろであるといわれています。
1922年にはスイスのチューリッヒにヴィルヘルムを招いて、心理学クラブで易の実験をやってもらいました。
ヴィルヘルムは道教の僧から実際に学んだ易者でもあったのです。
ユングはヴィルヘルムに、自分の患者のことについていろいろな質問をし、易を立てさせました。
そこで出された問題は、ユング自身はよく知っていて、ヴィルヘルムはまったく知らされていない内容のものでした。
このときヴィルヘルムが易占いによって得た回答は驚くほど正確なもので、しかもこのときヴィルヘルムはユングが想像もつかないような未来予測をし、それは後で見事に的中したといいます。
その後ユングはスカラベの体験をへて、シンクロニシティをあいまいな思い込みのまま終わらせたくないと思い、科学者として測定可能なもので証明しようと試みました。
そこで目をつけたのが易でだったのです。
ユングは自分の患者に対してしばしば易で占いをたててみました。
ユングは、こうした体験と自分自身の研究によって、易について次のように述べています。
易が当たると、そんなことは偶然だという人がいるが、易にかぎらず、われわれは一般に予測できない出来事を言い当てたりすると、しばしば「偶然」という言葉を使う。
だが、言い間違い、読み誤り、失念といった現象すらも決して偶然におこるわけではない。 易の的中がまぐれ当たりだという意見に、わたしは反対である。
それどころか、わたしが経験した易の的中率は、偶然の範疇をはるかに上回っている。これがシンクロニシティであることをわたしは確信している。