テレパシー
テレパシーもシンクロニシティに関する現象のひとつといえます。
テレパシーとは、一人の人間の思考が「何となく感じる」程度の音や声を伴って、別の人間に伝達されることです。
二人の人間を同調させるというところに特徴がありますが、故意に引き起こすことはできません。
むしろ、相手のことを意識していない心理状態のときほうが起こりやすいのです。
そして、テレパシーを引き起こす一番の原因となるのが愛情なのです。 何気なく惹かれ合う二人、などという表現を背景として起きることが多いのです。
実例1.壁の落書き
アメリカの青年ロバート・スティーヴンスは、アイルランドで知り合ったアイリスという女性と恋に落ちました。
一年間ほど交際が続きましたが、アメリカとアイルランドでは所詮距離が遠すぎました。
けっきょく恋は実らず、音沙汰もなくなってしまいました。
アイリスのことが忘れられないロバートは、環境を変えて踏ん切りをつけるためにオーストリアに行くことにしました。
しかし、オーストリアに着いてからも、彼の頭の中からアイリスのことが離れることはありませんでした。
忘れようとすればするほど、彼女の笑顔が脳裏に浮かんできてしまうのです。
彼女はいま幸せだろうか? 元気にしているだろうか? そんなことばかり考えていました。
そんなある日、散歩中の彼は行き止まりに突き当たってしまいました。
今の自分の心境を表しているようで、ますます惨めな気持ちになってきました。
引き返そうと壁に背を向けた瞬間、そこに何かを感じました。
その壁に近づいてみると、こんな落書きが書かれていました。
「アイリスは元気だ。」
彼が自分がオーストリアに来た理由を悟った瞬間でした。
不思議なことに、その落書きはアイルランド語ではなく、英語で書かれていたのです。
安堵のような気持ちとともに、アイリスに対する彼の執着心が消えてきました。
アイリスが元気なら、それだけでいいではないか。
そう思いながら帰途についたのです。