サイバネティクスとは
今日の情報社会を支えている一つの概念にサイバネティクスというものがあります。
これは1948年にアメリカの数学者ノーバート・ウィーナー博士によって提唱されたものです。
もともと、サイバネティクスという言葉はギリシャ語の「舵とり」という言葉からきており、制御・通信・情報処理の問題や理論を、機械だけの理論なとど枠を作らず、生物にも当てはまるものとして統一的に解釈する学問のことをいいます。
ウィナー教授がこの概念を思いつくきっかけは、第二次世界大戦のさなか、空爆にきた戦闘機を地上から撃ち落とすために、飛んでいる戦闘機の位置を予測する研究であったといいます。
開発初期のミサイルは、発射されて飛行機に近づいていても、飛行機のほうが避けると、そのまま外れてしまっていました。
ところが、「サイバネティクス」理論の登場により、飛行機が避ける方向に向かうようにミサイルを調整する機能を搭載した、誘導ミサイルが誕生しました。
「サイバネティクス」理論がミサイルの性能を飛躍的に向上させ、命中率を高めたのです。
ウィナー博士が体系化したサイバネティクスの理論は、今日では情報社会を支えている概念の一つとなり、オートマトンという人工頭脳機械をはじめ、多くの分野で実際に適用されていますが、その一方で、人間の成功理論にも多大な影響を与えました。
マクスウェル・マルツが唱えた「サイコ・サイバネティクス」理論がそれです。
[PR]サイコ・サイバネティクスとは
「サイコ・サイバネティクス」とは、ウィナー博士が確立した「サイバネティクス」理論を、マクスウェル・マルツ博士が人間の目標達成の理論に応用したもので、「人間の脳には志向性があり、ある明確な目標を設定すると、無意識のうちに目標達成に向かうようになる」というのがその概要です。
整形外科医であったマルツ博士は、数多くの人の顔や身体を整形しているうちに、ある貴重な発見をしました。
整形手術をした人は、その人の性格や人格まで急激に変わるケースが多いということです。
顔の醜さを整形手術で治療した場合、損なわれていた自己イメージがそれによって修復され、人生そのものも良い方向に変わっていくのでした。
この事実に注目したマルツ博士は、「サイバネティクス」という「自動成功メカニズム」が人間の脳と神経系でも作用しているに違いないと考えたのです。
そして、豊富な実例をもとに研究を重ねた結果、1960年に「サイコ・サイバネティクス」という一冊の本を出版しました。
この本はたちまち大きな反響を巻きおこし、驚異的なロングセラーとなりました。
「サイコ・サイバネティクス」の考え方によると、人間の「潜在意識」が「自動成功メカニズム」としての役割を果たします。
そしてその第一の機能は目的志向性です。
「潜在意識」にいったん目標を与えておくと、自動追尾式のミサイルや魚雷がターゲットを探して向かっていくように、自動的に目標を達成しれくれます。
言いかえると、人間はいったん目標を持つと、それを意識するしないにかかわらず、そこへ向かって行動するようになるということです。
ここで気をつけなければいけないのは、あなた自身が設定した目標しだいで、成功か失敗、幸福か、不幸かという結果に到達するということです。
潜在意識が「自動成功メカニズム」として働くのか「自動失敗メカニズム」として働くのかはあなたがインプットする命令しだいなのです。
サイコ・サイバネティクスの取扱説明書
サイコサイバネティクスは扱い方次第で、自動成功メカニズムにも自動失敗メカニズムにもなりますから、注意が必要です。 以下に注意点を示しました。
意識的な努力をしてはいけない
人間にはどんな問題でも解決してくれる「自動成功カニズム」が備わっています。
私たちのいけないところは、この「自動成功カニズム」を無視して、意識的な努力や顕在意識の力で何でも対処し、どんな問題も解決しようとする点にあるのです。
問題解決の糸口を掴むのは、顕在意識の仕事です。
しかし、顕在意識は本来、自ら問題を解決するようにはできていません。
顕在意識ですべてを処理しようとするから無理があるのです。
そればかりか意識的な努力は、「自動成功メカニズム」を邪魔してしまいます。
ですから意識的な努力をやめ、「自動成功メカニズム」に「問題」を任せてしまえばいいのです。
そうすれば、あとは「自動成功メカニズム」が、ストレスを感じさせずどんな問題も解決へと導いてくれるのです。
今のことだけに意識を集中する
明日の計画を立てるのは大事なことです。
しかし、明日のことを、いや一分後のことでさえ気にかけてはいけません。
なぜなら「自動成功メカニズム」が働くのはいまのこの瞬間だけだからです。
全神経を現在の状況に集中することによって初めて、「自動成功メカニズム」はその瞬間に応じた反応を適切にするのです。
慎重すぎてはいけない
慎重すぎると、かえって「自動成功メカニズム」を抑圧してしまうことになります。
そうなると目標へ向かって前進するのでなく、ただ横方向へ大きくジグザグ動いたり、完全にストップしてしまう結果になります。
それは避けねばなりません。
たとえば、何を話そうかと事前に思い悩んではいけません。
ただ口を開いて話しだし、話しながら軌道修正していくようにするのです。
過去の成功は記憶し、失敗は忘れるよう習慣づける
「自動成功メカニズム」は、過去に何度失敗しようと問題ではありません。
重要なのは成功した経験であり、それを記憶し、強化し、潜在意識に刻みこむことなのです。
しかし。多くの人は逆のことをやってしまっています。
過去の失敗を記憶し、成功を忘れてしまうのです。
失敗を記憶するだけでなく、それを感情とともに心に深く刻みつけ、恥と自責の念によって自分を鞭打つことで、自信を失ってしまうのです。
過去の失敗に対する過剰な自責や後悔は、目標を達成するうえで何の役にも立ちません。
感情は、現在の状況にこそきちんと役立つものであり、大切なのは、現在の方向性と現在の目標なのですから。